「国債を買ってみたいけれど、新窓販国債と個人向け国債の違いがよく分からない」というご相談をよくいただきます。
新窓販国債は、金利を長く固定できる一方で、途中で売ると元本割れすることもある商品です。
この記事では、2026年11月募集分の条件を例に、表面利率と応募者利回りの違い、購入単位と支払額、購入前に確認したいポイントを順に解説します。
なお、記載している条件は本記事作成時点(2026年11月8日)のものです。
購入の際は、財務省や金融機関で条件をご確認ください。
新窓販国債とは
2年・5年・10年の固定金利の国債
新窓販国債は、国が発行する国債を、銀行や証券会社、郵便局などの窓口で販売するしくみです。
正式には「新型窓口販売方式」による国債といいます。
満期は2年・5年・10年の3種類で、いずれも固定金利です。
買った時点の利率が満期まで変わらないので、受け取る利子の額があらかじめ分かります。
利子は半年ごと、年2回受け取ります。
また、条件は財務省が募集ごとに決めています。
そのため、どこの金融機関で買っても利率や価格は同じです。
個人向け国債との違い
個人が買える国債には、新窓販国債のほかに「個人向け国債」があります。
大きな違いは、金利のタイプと、途中で換金するときの扱いです。
| 項目 | 新窓販国債 | 個人向け国債 |
|---|---|---|
| 満期 | 2年・5年・10年 | 3年・5年・10年 |
| 金利タイプ | すべて固定 | 3年・5年は固定 10年は変動 |
| 購入単位 | 額面5万円から5万円単位 | 額面1万円から1万円単位 |
| 購入できる人 | 個人・法人など制限なし | 個人のみ |
| 途中換金 | 市場で売却(その時の時価) | 発行から1年経過後、国が買い取り(直前2回分の利子相当額を差し引き) |
| 元本割れ | 途中で売るとありうる | なし |
| 最低金利 | なし | 年0.05% |
個人向け国債は、途中で換金しても元本割れしない安心感があります。
一方、新窓販国債は市場の金利に近い水準で利回りが決まります。
個人向け国債の変動10年は、基準となる金利に0.66を掛けて利率が決まるため、同じ10年でも水準に差が出やすくなります。
たとえるなら、新窓販国債10年は「10年間の金利の予約券」です。
満期まで持てば約束どおりの利子と額面が戻ってきますが、途中で手放すと、その時の相場で売ることになります。
2026年11月債の発行条件
10年・5年・2年の条件一覧
本記事作成時点で財務省が公表している、11月募集分の条件は次のとおりです。
( )内は税引後の数値です。
| 項目 | 10年 | 5年 | 2年 |
|---|---|---|---|
| 表面利率 | 年3.1% (2.470235%) | 11月13日発表予定 | 年1.9% (1.514015%) |
| 応募者利回り | 年2.715% (2.104%) | 11月13日発表予定 | 年1.867% (1.481%) |
| 募集価格 (額面100円につき) | 102円97銭 | 11月13日発表予定 | 100円06銭 |
| 募集期間 | 11月10日〜27日 | 11月17日〜30日 | 11月4日〜27日 |
| 利払日 | 毎年3月20日・9月20日 | 毎年3月20日・9月20日 | 毎年5月1日・11月1日 |
5年債の条件は、11月13日に発表される予定です。
ここで注目したいのは、10年債の表面利率が3.1%なのに、応募者利回りは2.715%と低くなっている点です。
この差がどこから来るのかは、次の章で解説します。
募集期間中は利回りが変わらない
新窓販国債の募集価格と応募者利回りは、募集期間中は変わりません。
たとえば11月債の10年なら、募集期間の11月27日までに申し込めば、満期まで持った場合の応募者利回り年2.715%(税引前)が確定します。
条件が変わるのは募集回ごとです。
次の募集回では、その時点の入札結果をもとに、新しい価格と利回りが決まります。
これに対して、証券会社などで売られている「既発債」(すでに発行された国債を市場で買うもの)は、価格も利回りも毎日変わります。
新窓販国債は「その月の定価」、既発債は「毎日値段が変わる市場の相場」とイメージすると分かりやすいでしょう。
表面利率と応募者利回りの違い
募集価格が100円を超えると利回りは下がる
表面利率は、額面に対して毎年いくら利子が付くかを表す割合です。
応募者利回りは、購入価格と満期に戻ってくる金額の差まで含めた、満期まで持ったときの実質的な利回りです。
11月債の10年は、額面100円の国債を102円97銭で買い、満期には100円が戻ってきます。
つまり、満期までに2円97銭の目減りがあります。
この目減りを考えると、利回りは次のようなイメージになります。
1年間の利子:3.1円
目減り分を1年あたりにならす:2.97円 ÷ 約10年 = 約0.3円
1年あたりの実質的な収益:3.1円 − 約0.3円 = 約2.8円
購入価格に対する割合:約2.8円 ÷ 102.97円 = 約2.7%
※実際の応募者利回り(年2.715%)は、満期までの正確な期間を使って計算されています。
では、なぜ100円ちょうどで売られないのでしょうか。
表面利率は0.1%刻みで決まるため、市場の利回りとぴったり一致するとは限りません。
そのズレを価格で調整しているのです。
- 表面利率が市場の利回りより高い場合
価格が100円より高くなり、応募者利回りは表面利率より低くなる - 表面利率が市場の利回りより低い場合
価格が100円より安くなり、応募者利回りは表面利率より高くなる
ほかの商品や別の募集回と比べるときは、表面利率ではなく応募者利回りで比べるのがポイントです。
「途中から買う」ように見える理由
11月債の10年は、発行日が12月9日なのに、利払日は3月20日と9月20日です。
まるで途中から買うように見えますが、誰かが持っている国債を買うわけではありません。
新窓販国債は、直前に入札された国債と同じ銘柄として発行されることが多くあります。
すでに発行されている銘柄を追加で発行することもあり、これを「リオープン」といいます。
そのため、利払日や満期日が既存の銘柄と同じになるのです。
このとき、購入代金とあわせて「初回の利子の調整額」(経過利子)を支払います。
初回の利払日には半年分の利子を丸ごと受け取るため、発行日までの分を先に支払っておくしくみです。
あとで利子として戻ってくるので、損をするわけではありません。
途中の駅から乗るけれど、席は国が新しく用意したもの。
ただし、時刻表(利払日・満期日)はすでに走っている便と同じ、というイメージです。
購入単位と支払額
額面5万円単位で申し込む
新窓販国債は、額面5万円から5万円単位で購入できます。
1回の申込みあたりの上限は、額面3億円です。
注意したいのは、指定するのが「支払う金額」ではなく「額面」だという点です。
募集価格が100円を超えている場合、支払額は額面より多くなります。
購入代金:10万円 × 102円97銭 ÷ 100円 = 102,970円
支払額:102,970円 + 初回の利子の調整額(数百円程度)
満期に戻ってくる金額:10万円
「10万円で買えるだけ」という注文はできない
投資信託のように「この金額で買えるだけ」という注文は、新窓販国債ではできません。
どこの金融機関でも、額面5万円単位で申し込むしくみです。
たとえば予算が10万円の場合、11月債の10年では次のようになります。
- 額面5万円
購入代金は約51,500円で、予算内に収まる - 額面10万円
購入代金は約103,000円で、予算を少し超える
予算を守るなら額面5万円で申し込み、残りの約4.8万円は手元に残す形になります。
予算を少し上乗せできるなら、額面10万円にするのも一つの方法です。
申込みの際は「額面◯万円分」と伝えれば大丈夫です。
購入前に確認したい3つのポイント
新窓販国債を購入する前に確認しておきたいポイントは、次の3つです。
① 満期まで使わないお金か
応募者利回りは、あくまで満期まで持った場合の数字です。
途中で売る場合は、その時の市場価格での売却になります。
金利が上がると国債の価格は下がるため、買ったときより安い価格でしか売れないこともあります。
特に11月債の10年は102円97銭で買うので、満期前に売ると100円を下回る価格になる可能性もあります。
生活費や、近いうちに使う予定のあるお金は避け、満期まで使わない資金で購入するのが基本です。
途中で換金する可能性があるなら、個人向け国債も選択肢になります。
② 税引後の利回りで考える
国債の利子には、20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかります。
11月債の10年なら、応募者利回りは税引前で年2.715%、税引後では年2.104%です。
手元に残るのは税引後の利回りなので、こちらを基準に考えておくと安心です。
定期預金など、ほかの商品と比べるときも、税引後どうしで比べるようにしましょう。
③ 申込締切は金融機関によって早まる
財務省が定める募集期間は、11月債の10年なら11月27日までです。
ただし、窓口やインターネットでの受付は、金融機関によって締切が前倒しになることがあります。
また、初めて国債を買う場合は、国債を取引するための口座開設が必要です。
手続きに時間がかかることもあるので、早めに確認しておきましょう。
金融機関側の事情も知っておく
個人向け国債はキャンペーンが多い
新窓販国債も個人向け国債も、買う側が払う手数料は基本的にかかりません。
金融機関は国から販売手数料を受け取りますが、その額は大きくありません。
キャッシュバックなどのキャンペーンが多いのは、主に個人向け国債です。
元本割れがなく勧めやすいため、新しいお客様や資金を呼び込むきっかけとして使われています。
一方、新窓販国債はどこで買っても条件が同じなので、金融機関側で工夫する余地はあまりありません。
国債をきっかけに別の商品を勧められることも
金融機関にとって収益が大きいのは、国債よりも投資信託や保険、外国債券などです。
そのため、国債の購入をきっかけに、ほかの商品を案内されることもあります。
案内そのものが悪いわけではありませんが、目的に合わない商品まで買う必要はありません。
「今回は国債だけ」と決めて行けば、落ち着いて手続きできます。
まとめ
新窓販国債が向いている人
ここまでの内容をふまえると、新窓販国債が向いているのは次のような人です。
- 満期まで使わないお金がある人
満期まで持てば、額面どおりの金額が戻ってくる - 金利を長く固定したい人
購入時の利回りが満期まで続くので、受け取る利子の見通しが立てやすい - 法人の余裕資金を運用したい人
個人向け国債は個人しか買えないが、新窓販国債は法人も購入できる
比べるときは表面利率ではなく応募者利回り、それも税引後の数字で見ることが大切です。
また、申込みは額面5万円単位で、募集価格によって支払額が変わります。
締切も金融機関ごとに確認しておきましょう。
途中で換金する可能性があるお金なら、個人向け国債と組み合わせるのも一つの方法です。
使う時期に合わせて、無理のない形で国債を活用してみてください。
