株の配当金を受け取ったとき、「税金で約20%も引かれているのはもったいないな」と感じたことはありませんか?
実は、確定申告で「配当控除」という制度を利用すれば、払いすぎた税金を取り戻せる可能性があります。
特に課税所得が一定以下の会社員の方にとっては、実質的な利回りをアップさせる強力な節税手段です。
しかし、2024年度(令和6年度)からは税制が改正され、安易に確定申告をすると「逆に住民税や社会保険料が高くなって損をした」という事態も起こり得るようになりました。
「自分は確定申告をした方がお得なの?」
「総合課税って何?デメリットはないの?」
そんな疑問を解消するために、本記事では配当控除の仕組みから、具体的な計算式、そして「申告すべき人・すべきでない人」の判断基準までをステップバイステップで分かりやすく解説します。
せっかくの配当金を1円でも多く手元に残すために、正しい知識を身につけていきましょう。
配当控除の基本と計算の仕組み
1. 配当控除とは?二重課税を解消する節税の味方
株の配当金を受け取るとき、通常は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)が最初から差し引かれています。
これを「源泉徴収」と呼びますが、実はこの税金、確定申告をすることで取り戻せる可能性があります。
それが「配当控除」です。
そもそも配当金は、企業が法人税を支払った後の「残り物」から支払われます。
そこにさらに所得税をかけるのは「二重課税」になってしまうため、その一部を差し引いて調整しましょう、というのがこの制度の趣旨です。
2. 配当控除の計算式|いくらお得になる?
配当控除を受けるためには、確定申告で「総合課税」を選択する必要があります。
このとき、受けられる控除額は以下の通りです(※課税総所得金額が1,000万円以下の場合)。
所得税:配当所得の 10%
住民税:配当所得の 1.2%
具体的な計算例
例えば、年間で10万円の配当金を受け取った場合を考えてみましょう。
100,000円 × 10% = 10,000円(所得税の控除額)
100,000円 × 1.2% = 1,200円(住民税の控除額)
合計:11,200円
合計で11,200円分、税金が安くなる(または還付される)計算になります。
3. 「総合課税」を選ぶと税率はどう変わる?
通常(分離課税)は一律で約20%の税率ですが、総合課税を選ぶと「累進課税(所得が多いほど税率が上がる仕組み)」が適用されます。
ここで重要になるのが、「自分の所得税率 - 配当控除10%」が、元の税率15.315%より低くなるか? という点です。
| 課税所得金額 | 所得税率 | 配当控除(10%)適用後の実質税率 | 源泉徴収(15.315%)との比較 |
| 195万円以下 | 5% | ▲5%(実質0%以下) | 圧倒的にお得 |
|---|---|---|---|
| 330万円以下 | 10% | 0% | かなりお得 |
| 695万円以下 | 20% | 10% | お得 |
| 900万円以下 | 23% | 13% | 少しお得 |
| 900万円超 | 33%〜 | 23%〜 | 損をする |
住民税の落とし穴と社会保険料への影響
所得税がお得になるからといって、すぐに確定申告に飛びつくのは禁物です。
以下の「住民税」と「社会保険料」のルールを必ず確認しておきましょう。
1. 住民税は「一律10%」が適用される
所得税は「累進課税」でしたが、住民税は所得の多寡にかかわらず一律10%です。
ここに配当控除(1.2%)を適用しても、実質の税率は8.8%となります。
源泉徴収(分離課税)のまま: 住民税は 5%
確定申告(総合課税)で配当控除: 住民税は 8.8%
つまり、住民税だけで見ると、確定申告をすることで逆に3.8%分(8.8% – 5%)税金が増えてしまうのです。
2. 社会保険料が上がるリスク(※要注意)
ここが最大の注意点です。
配当控除を受けるために確定申告(総合課税)をすると、その配当金はあなたの「合計所得金額」に加算されます。
所得が増えたとみなされることで、以下の影響が出る可能性があります。
国民健康保険・介護保険
保険料が所得に連動するため、年間で数万円〜十数万円アップする場合があります。
75歳以上の後期高齢者医療制度
窓口負担が2割や3割に引き上げられる可能性があります。
配偶者控除・扶養控除
合計所得金額が一定ライン(48万円など)を超えると、扶養から外れてしまうことがあります。
3. 【重要】2024年からの制度変更(裏技の廃止)
以前は「所得税は総合課税(還付)、住民税は申告不要(5%のまま)」という「いいとこ取り」ができました。
しかし、税制改正により2024年分(令和6年分)以降の確定申告からは、所得税と住民税の課税方式を一致させなければならなくなりました。
つまり、「所得税で節税するなら、住民税の増額もセットで受け入れる必要がある」ということです。
配当控除を「受けるべき人」と「避けるべき人」
これまでの情報を整理して、判断基準をまとめます。
⭕ 配当控除(総合課税)がおすすめな人
会社員(社会保険加入者)
職場の健康保険(健保組合や協会けんぽ)に加入している場合、給与以外の所得が増えても毎月の保険料は変わりません。
課税所得が695万円以下の人
所得税の還付額が大きく、住民税の増額分を差し引いてもプラスになる可能性が高いです。
❌ 配当控除(総合課税)を避けるべき人
自営業・フリーランス(国民健康保険加入者)
所得増に伴う保険料アップが、還付額を上回る「逆ザヤ」になるリスクが非常に高いです。
扶養の範囲内で働いている人
103万円や130万円の壁を意識している場合、配当金を合算することで扶養から外れる恐れがあります。
課税所得が900万円を超える人
そもそも所得税率が高いため、配当控除を使っても分離課税(20.315%)より高くなってしまいます。
まとめ|賢い配当金管理で手残りを最大化しよう
今回の記事では、配当控除の仕組みと、確定申告で「総合課税」を選択すべきかどうかの判断基準を解説しました。
記事のポイントをおさらい
配当控除は「二重課税」を防ぐための制度: 所得税で10%、住民税で1.2%の税額控除が受けられる。
所得税だけで見れば「900万円」が境界線: 課税所得が900万円以下なら、総合課税の方が所得税率は低くなる。
社会保険料とのバランスが最重要: 特に自営業者やフリーランス(国民健康保険)の方は、還付される税金よりも保険料の増額が大きくなる「逆ザヤ」に注意が必要。
2024年以降は「いいとこ取り」が不可: 所得税と住民税の課税方式を分けることができなくなったため、トータルでのシミュレーションが必須。
まとめ
現在、多くの投資家が利用している「新NISA(成長投資枠)」で受け取る配当金は、そもそも非課税です。
そのため、配当控除を考える必要はありません。
配当控除を検討すべきなのは、あくまで「特定口座(源泉徴収あり)」などで運用している課税対象の配当金です。
「確定申告は面倒……」と感じるかもしれませんが、今はマイナポータル連携により、証券会社のデータを自動で取り込んでスマホから簡単に申告できるようになっています。
自分の課税所得を確認し、もし「お得になるグループ」に当てはまるのであれば、ぜひ次回の確定申告で配当控除にチャレンジしてみてください。
わずかな手間で、投資のパフォーマンス(実質利回り)を確実に上げることができます。