【図解で納得】国民健康保険料はどう決まる?計算の仕組みと高くなる理由をプロが解説

「今年も国民健康保険料の通知書(納付書)が届いたけれど、金額が高すぎて驚いた……」

「去年より収入は少ししか上がっていないのに、保険料が跳ね上がっているのはなぜ?」

フリーランスや個人事業主、あるいは退職して会社員を辞めた方など、国民健康保険(以下、国保)に加入している方の多くが、このような疑問や悩みを抱えています。

会社員の「社会保険(健康保険)」は、会社と折半で支払うため、給与天引きの額面しか意識しないことが多いですが、国保は**「全額自己負担」**。その重みに驚愕する方も少なくありません。

「どうせ払わなきゃいけない税金のようなものでしょ?」と諦めるのは少し待ってください。実は、国民健康保険料は**「3つの要素」と「4つの計算方法」**の組み合わせという、明確なロジックで決まっています。

この計算の仕組み(ロジック)を知ることは、単なる知識の習得にとどまりません。「なぜ高いのか」というモヤモヤが晴れるだけでなく、「どこをどうすれば安くなる可能性があるのか」という節約のツボが見えてくるのです。

この記事では、現役のファイナンシャルプランナーが、複雑怪奇と言われる国民健康保険料の計算の仕組みを、専門用語をできるだけ噛み砕いてわかりやすく解説します。お手元の通知書を片手に、その中身を解剖していきましょう。

この記事を書いた人

わがままボーヤ
マネー相談室長

本サイトを運営している現役FP

保険代理店で10年以上活動し2,000世帯以上とFP相談を行うも手数料ビジネスに嫌気がさし、FIREの実現を機に独立

商品を販売しない自由なFPとして、自分が本当に伝えたいことを「わがまま」に遠慮なく有益な情報をお届け!

目次

まずは全体像を把握!国民健康保険料を構成する「3つの柱」

国民健康保険料の計算式を見る前に、まずは「何のためのお金を払っているのか」という内訳を知っておきましょう。

国保の保険料は、大きく分けて以下の3つの分(柱)で構成されています。合算された金額が請求されていますが、中身は別物です。

1. 医療分(基礎賦課額)

これは、私たちが病気や怪我をして病院にかかった際の医療費に充てられる、最も基本的な部分です。

国保に加入しているすべての人が支払う義務があります。「風邪をひいたときに3割負担で済む」のは、この医療分をみんなで出し合っているからです。

ここには年間で支払う上限額(賦課限度額)が設定されています(令和6年度基準で65万円など、年度により改定あり)。

2. 支援金分(後期高齢者支援金等賦課額)

これは、75歳以上の方が加入する「後期高齢者医療制度」を若年層や現役世代が支えるためのお金です。

「自分はまだ若いから関係ない」と思われるかもしれませんが、日本の医療制度を維持するための相互扶助の仕組みとして、これも**加入者全員(0歳の赤ちゃん含む)**が対象となります。

3. 介護分(介護納付金賦課額)

ここが非常に重要なポイントです。これは将来の介護サービスに使われるお金で、**40歳以上65歳未満の方(介護保険第2号被保険者)**のみが加算されます。

よくあるご相談で、「40歳になった途端、保険料が急に高くなった!」という悲鳴を聞きますが、その原因はまさにこれです。39歳までは「医療分+支援金分」の2階建てだったのが、40歳からは「介護分」が乗っかって3階建てになるため、その分負担が増えるのです。

※65歳になると、介護保険料は国保とは別に(原則年金天引きで)支払う形に変わります。

金額はどう決まる?保険料を決める「4つの計算方式」

「医療・支援・介護」の3つの柱それぞれについて、いくら払うかを決める必要があります。

ここで登場するのが、自治体ごとに定められた計算ルールです。主に以下の4つの方式を組み合わせて計算します。

自治体によって「4方式すべて採用」「所得割と均等割の2方式のみ採用」などバラつきがありますが、基本を知れば怖くありません。

所得割(しょとくわり):稼ぎに応じて決まる

これが保険料の大部分を占める、最もインパクトの大きい要素です。前年(1月〜12月)の所得に応じて計算されます。

シンプルに言えば、**「稼げば稼ぐほど高くなる部分」**です。

※注釈:ここで言う「所得」とは?

売上そのものではなく、売上から経費を引いた金額です。会社員なら給与所得、事業主なら事業所得などが該当します。ここからさらに、誰でも一律で引ける「基礎控除(43万円)」を引いた金額(賦課基準額といいます)をもとに計算します。

均等割(きんとうわり):人数に応じて決まる

所得がゼロの赤ちゃんからお年寄りまで、加入者1人あたりにかかる定額の料金です。「国保の基本料金」とイメージしてください。

世帯の加入人数が多ければ多いほど、この均等割が人数分加算されるため、大家族ほど負担が重くなります。

(※未就学児については均等割を軽減する措置が導入されています)

平等割(びょうどうわり):一世帯あたりにかかる

1人あたりではなく、「一世帯ごと」にかかる定額料金です。

世帯の中に国保加入者が1人でもいれば発生します。人数が増えても金額は変わりませんが、単身世帯にとっては割高に感じやすい部分です。

近年、この平等割を廃止し、「所得割+均等割」のみにする自治体が増えていますが、まだ採用している地域も多くあります。

資産割(しさんわり):持ち家などの資産で決まる

その世帯が所有している土地や家屋などの「固定資産税額」に応じてかかる料金です。

「収入は少ないけれど、広い土地を持っている」という方から徴収するための仕組みですが、二重課税のような性質があるため、全国的に廃止する自治体が急増しています(東京23区などはすでに廃止)。

ただ、まだ採用している地方自治体もあるため、持ち家の方は要確認です。

【シミュレーション】計算の流れを具体例でイメージしよう

言葉だけではわかりにくいので、一般的な**「所得割 + 均等割」の2方式を採用している自治体**(例:東京23区など)をモデルに、計算の流れをシミュレーションしてみましょう。

【モデルケース】

  • 本人(40歳・自営業)
  • 前年の総所得金額:400万円(青色申告控除後)
  • 単身世帯

ステップ1:基準となる「賦課基準額」を出す

まず、保険料率を掛けるための「ベースの金額」を計算します。

総所得金額から、基礎控除(43万円)を引きます。

400万円 - 43万円 = 357万円

これが**「賦課基準額(旧ただし書き所得)」**と呼ばれるものです。すべての計算はこの357万円を使って行います。

ステップ2:各区分の「所得割」を計算する

自治体の料率(仮定の数字です)を掛けていきます。

  • 医療分(料率7.5%):357万円 × 7.5% = 約26.7万円
  • 支援金分(料率2.5%):357万円 × 2.5% = 約8.9万円
  • 介護分(料率2.0%):357万円 × 2.0% = 約7.1万円

これで、所得に応じた部分(所得割)の合計が出ました。

ステップ3:各区分の「均等割」を足す

次に、1人あたりの定額料金(仮定)を足します。

  • 医療分均等割:4万円
  • 支援金分均等割:1.3万円
  • 介護分均等割:1.7万円

ステップ4:すべてを合算する

最後にこれらをすべて足し合わせます。

  • 医療分合計:26.7万 + 4万 = 30.7万円
  • 支援金分合計:8.9万 + 1.3万 = 10.2万円
  • 介護分合計:7.1万 + 1.7万 = 8.8万円

年間の国民健康保険料 = 約49.7万円

(※月額にすると約4.1万円)

いかがでしょうか。所得400万円に対して約50万円。実に年収の1割以上が保険料で消える計算になります。

ここにさらに所得税や住民税、国民年金が加わるため、手取りがいかに厳しくなるかが実感できると思います。

国民健康保険料を少しでも安くする方法はある?

計算ロジックがわかれば、対策も見えてきます。

保険料を下げるための変数は、計算式にあった**「所得(賦課基準額)」**です。自治体が決める「料率」や「均等割額」は変えられませんが、自分の課税所得を合法的に減らすことは可能です。

1. 確定申告で「控除」を漏れなく申告する

会社員と違い、国保には「扶養」という概念がありません。しかし、税金の計算上の「所得」を下げることで、連動して国保の「所得割」を下げることができます。

領収書を整理して経費を正しく計上するのはもちろん、**「青色申告特別控除(最大65万円)」**は必ず活用しましょう。65万円の控除は、税金だけでなく国保の計算上もそのまま所得を減らす効果があります。

2. iDeCo(イデコ)や小規模企業共済を活用する

これが最強の節税策であり、国保削減策です。

老後資金を作るための「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や、経営者の退職金制度「小規模企業共済」の掛金は、全額が所得控除になります。

例えば、月額5万円(年60万円)を積み立てた場合、所得税・住民税が安くなるだけでなく、国保の計算も「所得が60万円少なかったこと」として行われます。

先ほどのシミュレーションで言えば、賦課基準額が下がるため、料率(約12%程度)を掛けた分、つまり年間で約7万円以上も保険料が安くなる可能性があります。積み立てをしながら、今の保険料も安くなる。これを使わない手はありません。

3. 世帯分離を検討する(ケースバイケース)

少しテクニカルな方法ですが、同じ家に住んでいても、住民票上の世帯を分ける「世帯分離」が有効な場合があります。

例えば、低所得の親と高所得の子が同居している場合、世帯主(高所得者)の所得に応じて、親の分の保険料軽減措置(7割軽減など)が受けられなくなることがあります。

世帯を分けることで、親世帯の所得が下がり、軽減措置が適用されるケースがあるのです。ただし、逆に平等割が二重にかかることで高くなる場合もあるため、役所の窓口での試算が必須です。

まとめ:仕組みを知れば対策が見えてくる

国民健康保険料は、「ブラックボックス」ではありません。

以下のポイントを押さえておけば、なぜその金額なのかを理解することができます。

  • 国保は「医療・支援・介護」の3階建て構造である。
  • 金額は主に「前年の所得(所得割)」と「家族の人数(均等割)」で決まる。
  • 住んでいる自治体によって、料率や計算方式(資産割の有無など)が違う。

通知書が届いたら、まずは「決定通知書」の裏面や同封のリーフレットを見てみてください。そこにはあなたの街の計算式が載っています。

「高い!」と嘆くだけでなく、iDeCoや青色申告など、できる対策から一つずつ始めてみましょう。その小さな行動が、来年の保険料通知を見たときの「安くなった!」という喜びに変わるはずです。

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この記事を書いた人

本サイトを運営している現役FP

■経歴■
保険代理店で10年以上活動し2,000世帯以上とFP相談を行うも手数料ビジネスに嫌気がさし、FIREの実現を機に独立。

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■保有資格■
-FP1級技能士
-CFP®
-証券外務員一種
-宅地建物取引士
-中小企業診断士
-貸金業務取扱主任者

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