MENU

65歳以上でも年金が減る?在職老齢年金の仕組みと損しない働き方をわかりやすく解説!

「年金をもらってるけど、まだ働いてる。それって損なの?」
そんな不安を感じたことはありませんか?

65歳以上になって年金を受け取っていても、厚生年金に加入して働いていると「在職老齢年金」という制度によって、年金が一部カットされる可能性があります。
ですが、仕組みを正しく理解しておけば、不安を感じる必要はありません。

この記事では、65歳以上で働く人が知っておきたい在職老齢年金の制度のポイントを、4つの見出しでわかりやすく解説します。

この記事を書いた人

わがままボーヤ
マネー相談室長

本サイトを運営している現役FP

保険代理店で10年以上活動し2,000世帯以上とFP相談を行うも手数料ビジネスに嫌気がさし、FIREの実現を機に独立

商品を販売しない自由なFPとして、自分が本当に伝えたいことを「わがまま」に遠慮なく有益な情報をお届け!

目次

在職老齢年金とは?働いていると年金が減るって本当?

「働きながら年金を受け取ると、年金が減ることがある」
そんな話を耳にして、不安を感じたことはありませんか?

実はこれは事実です。
年金制度には、「在職老齢年金(ざいしょくろうれいねんきん)」という仕組みがあり、働いて一定以上の収入があると、年金の一部が支給停止になる場合があるのです。

在職老齢年金とは?

在職老齢年金とは、厚生年金に加入して働いている年金受給者に対して、年金の支給額を一部調整する制度です。

対象は以下のすべてに該当する人です:

  • 老齢厚生年金を受け取っている人
  • 厚生年金に加入して働いている人

つまり、「年金をもらい始めた後も、厚生年金に加入して働いている人」は自動的にこの制度の対象になります。

なぜ年金が減らされるの?

一言でいえば、「年金制度の公平性を保つため」です。

年金は、「高齢期の生活を保障する」ために設けられている制度です。したがって、すでに高い給与を得ている人が、さらに満額の年金をもらうと、他の人との間で不公平が生じるという考え方が背景にあります。

そのため、ある程度の収入があるなら、年金は少し調整しようというのが、在職老齢年金の基本的な考え方です。

どの年金が減るのか?

ここで誤解しやすいポイントがあります。
減らされるのは「老齢厚生年金」のみです。

種類減額の対象?説明
老齢基礎年金(国民年金) 減額されない・全国民に共通する年金
・65歳以上なら満額支給
老齢厚生年金 減額される可能性あり・厚生年金に加入していた期間・報酬に応じた部分。

つまり、65歳以上の方が働いても老齢基礎年金はそのまま支給され続けます

在職老齢年金の調整は「稼ぎすぎたら一部ストップ」

在職老齢年金は、働いていることで収入(給与+年金)が一定額を超えた場合のみ、年金の一部がカットされます。

支給が一部停止される条件は以下の通りです。

老齢厚生年金の月額(基本月額)
② 給与の月額(総報酬月額相当額)
 
→ 合計が51万円を超えると支給停止対象に
 ※2025(令和7)年度

この「51万円ルール」については、次の見出しで詳しく解説しますが、多くの人はこの金額に達しないため、実際には満額支給されるケースの方が多いです。

制度のポイントまとめ

ポイント内容
対象厚生年金に加入して働いている年金受給者(主に65歳以上)
調整対象老齢厚生年金のみ(老齢基礎年金は対象外)
支給停止ライン月51万円(年金+給与)を超えると超過分の半分が停止

働いていることが「損」になるとは限りません。
むしろ、制度の仕組みを知っておけば、安心して働き続けることができます。

支給停止の条件と仕組み

在職老齢年金の制度は、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら働く場合、年金が一部支給停止される可能性があります。
ここでは、支給停止ルールとその仕組みを具体的にわかりやすく解説します。

支給停止ラインは「51万円」

在職老齢年金の調整は、以下の2つの金額を合計して判定されます。

老齢厚生年金の月額(基本月額)
② 給与の月額(総報酬月額相当額)

この合計が51万円を超えると、超過分の半分が支給停止される仕組みです。

計算例

① 年金月額(老齢厚生年金):18万円
② 給与月額(標準報酬月額):35万円
 合計:53万円 → 51万円を2万円超過

→ 超過分2万円 × 1/2 = 1万円が年金からカット

この場合、支給される年金月額(①)は 17万円になります。

計算式

支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-51万円)×1/2

  • 「年金と給与の合計が51万円を超えない」場合は 年金は全額支給
  • 「超えた場合」は、その 超過分の1/2が停止

この「51万円」は“支給停止のボーダーライン”と覚えておきましょう。

よくある誤解①「月の給料手取りが51万円超えたらアウト?」

違います。実際の手取り額ではなく、あくまで「標準報酬月額+基本月額」の合計で判断されます。

給与:社会保険加入時に届け出た標準報酬月額ベース
年金:改定通知書などに記載されている月額

※実際の明細や手取り額とはズレるため、年金事務所や「ねんきん定期便」で正確な金額を確認しましょう。

よくある誤解②「年金が全部カットされるって本当?」

かなりの高収入の場合、老齢厚生年金が全額支給停止になることもあります。
ただし、老齢基礎年金(国民年金部分)は減額されません。

計算例

① 年金月額(老齢厚生年金):20万円
② 給与月額(標準報酬月額):50万円
 合計:70万円 → 51万円を19万円超過

→ 超過分19万円 × 1/2 = 9.5万円が年金からカット

この場合、支給される年金月額(①)は 10.5万円になります。

調整の対象外になる働き方とは?

60歳以上で働いていても、以下の場合は在職老齢年金の支給停止の対象外です。

  • 厚生年金に加入していない(週20時間未満の勤務など)
  • 自営業・フリーランス(国民年金のみ)
  • 雇用契約があるが、社会保険の加入要件を満たさない

「働きながら年金を満額もらいたい」という方は、勤務条件の調整で対象外になる方法も検討できます。

支給停止の判断タイミングはいつ?

毎年6月と7月頃に、「改定通知書」が送られてきます。
これは前年の収入情報をもとに計算されており、実際の支給額に影響を与えます。報酬が変動した場合は、標準報酬月額が見直され、2〜3か月後から支給額が変更になります

制度の仕組みをしっかり理解しておけば、「年金が減るかもしれない」という不安も冷静に整理できます。

年金が止まるのはいつ?退職・収入減での再支給のタイミング

在職老齢年金では、働きながら年金をもらっていると、一定以上の収入がある場合に年金が一部カットされることがあります。

では、
「退職したら、いつから年金は満額に戻るの?」
「給与が減った場合は?」

といった疑問も多く寄せられます。

ここでは、再支給のタイミングや手続き上のポイントについて詳しくご説明します。

再支給のきっかけは「厚生年金資格の喪失」または「標準報酬の変更」

支給停止が解除されるタイミングは、主に以下の2つです。

①厚生年金の資格を喪失したとき(退職したとき)

最もはっきりした再支給のタイミングです。

退職後、厚生年金の資格が外れた月の「翌月分」から、年金が満額支給に戻ります。
例えば、6月末で退職した場合は、7月分の年金から満額支給となります。

退職後も自動で支給再開される?

基本的には、会社が厚生年金の喪失手続きを行うことで年金の支給停止も解除されます。
しかし、手続きが遅れると支給再開も遅れることがあります。

念のため、退職後に年金事務所に確認をすることをおすすめします。

  • 「いつから再開されるのか」
  • 「手続きは完了しているか」

などを確認しておくと安心です。ねんきんネットや年金ダイヤルも活用できます。

②給与が下がり標準報酬月額が変更されたとき

→ 月給が下がると「総報酬月額相当額」も下がり、支給停止額が減る(or解除)されることがあります。

ただし、この反映には数か月のタイムラグがあります。

標準報酬月額の変更が反映されるまでの流れ
  1. 給与が変更される(例:4月から給与減額)
  2. 会社が月額変更届を提出(通常7月頃)
  3. 年金機構が審査・反映(8〜9月頃)
  4. 実際の年金支給額が変わるのはその翌月分から

つまり、「給与が下がってもすぐには年金額に反映されない」点に注意が必要です。

支給再開時の注意点

支給停止が解除されたからといって、過去の停止分がさかのぼって戻るわけではありません。
退職の「翌月以降」の分から支給額が戻ります。

退職→再雇用で厚生年金に再加入した場合は、また支給停止の対象になります。たとえ1〜2か月だけの就労でも、厚生年金に加入していれば、その期間だけ支給停止になることがあります。「週20時間以上・月88,000円以上」など、加入条件を満たすかどうかは、短期でも見られます。

損をしない働き方とは?在職老齢年金と上手に付き合うポイント

在職老齢年金の仕組みを知って、「じゃあ働くと損なの?」と心配になる方も少なくありません。

でも、実はその逆。制度を理解しておけば、損せず・無理せず・自分に合った働き方が選べるようになります。

この章では、在職老齢年金と上手に付き合うための働き方のポイントを、具体的にご紹介します。

年金が減っても、手取り収入は増えるケースが多い

まず押さえておきたいのは、年金が減ったからといって「損」とは限らないということ。

例えば、年金が月に3万円減ったとしても、給与で20万円以上稼いでいれば、トータルではプラス収入になります。

項目金額(例)
年金(満額)18万円
年金(支給停止後)17万円
給与35万円
総収入17万円+35万円=52万円
年金満額時より+34万円

「年金は調整されるけど、働けば全体の生活資金は増える」という視点も大切です。

損を防ぐ3つの働き方の工夫

年金の支給停止をできるだけ抑えたい、という方に向けて、以下のような工夫があります。

①月収を「51万円以下」に抑える

在職老齢年金の支給停止ラインは、「年金+給与」で月51万円超
つまり、年金額を考慮して給与を調整することで支給停止を避けることができます。

たとえば、

年金月額が15万円 → 給与を36万円以内に抑える
年金月額が12万円 → 給与は39万円までOK

これは企業との雇用契約時に相談することで調整できるケースもあります。

②パートや短時間勤務に切り替える

短時間勤務やパートタイムに切り替えると厚生年金の加入対象外になる場合があります。

加入条件を満たさない働き方(週20時間未満、月収88,000円未満など)であれば、在職老齢年金の調整そのものが発生しません

「ちょっと働きたいけど年金は減らしたくない」という人におすすめです。

③働き方の節目を活用する(再雇用・退職など)

  • 役職定年後の再雇用契約
  • 定年退職→再就職のタイミング
  • 収入が一時的に下がる時期

など、「収入の変化」がある場面では、年金の支給額も見直されるチャンスです。

たとえば、定年後に給与が下がった場合、標準報酬月額の再設定で支給停止額が減る可能性もあります。

「あえて働く」「あえて働かない」という選択肢

在職老齢年金は「働いたら年金が減る=働かない方が得」という単純な話ではありません。

しっかり稼ぎたい  → 支給停止を承知で働く(総収入は増える)
年金を確保したい  → 収入調整やパート勤務を検討
健康・社会とのつながりのために働きたい  → 年金より生きがいを重視

働き方の価値観は人それぞれです。
制度の仕組みを理解したうえで、自分にとって一番納得のいく働き方を選ぶことが大切です。

将来の年金が増えるメリットも

もうひとつ注目すべきなのが、65歳以降に働き続けると、将来的な年金額が増える可能性があるということです。

これは「在職中の年金額改定(在職定時改定)」という仕組みにより、毎年1回、自動的に老齢厚生年金が増額される制度です。

年金が一時的に減っても将来への備えになるという観点でも、働き続ける価値はあります。

【まとめ】制度を味方に、安心して働き続ける道を選ぼう

在職老齢年金は、一見ややこしく感じられますがポイントを押さえておけば難しくありません。

47万円のボーダーを意識する
給与や働き方で年金をコントロールできる
制度を知ることで損しない選択ができる

収入と年金の両立は可能です。
大事なのは、「減る・損する」という表面的な印象にとらわれず、トータルでの収入バランスと将来設計を考えること。自分に合った働き方を見つけ、「年金が減るかも」という不安を制度理解で安心に変えていきましょう。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次