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「親を扶養に入れると節税に?条件・手続き・注意点をやさしく解説」

「親を扶養に入れると税金が安くなるって聞いたけど、具体的にどうなるの?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?

高齢の親の生活費を支えている方、実家のサポートをしている方なら、一度は「扶養に入れた方がいいのかな」と考えたことがあるはず。
でも、実際のところ条件は厳しいの?手続きは難しい?メリットはどれくらいある?
今回はそんなモヤモヤを解消すべく、「親を扶養に入れることの基礎知識と注意点」について、分かりやすく解説します!

この記事を書いた人

わがままボーヤ
マネー相談室長

本サイトを運営している現役FP

保険代理店で10年以上活動し2,000世帯以上とFP相談を行うも手数料ビジネスに嫌気がさし、FIREの実現を機に独立

商品を販売しない自由なFPとして、自分が本当に伝えたいことを「わがまま」に遠慮なく有益な情報をお届け!

この記事の結論
  • 親を扶養に入れると所得税・住民税の負担が軽くなる可能性がある
  • 「同居していない」「親の年金収入が多い」などの条件によっては扶養に入れられない場合もある
  • 手続きや書類の提出は年末調整や確定申告で対応
  • 他の控除制度(例えば医療費控除や社会保険の扶養)との違いも押さえておくと◎
目次

そもそも「親を扶養に入れる」とは?

扶養に入れるとは、税金や社会保険の制度上「親を経済的に支えている」と申告することです。
大きく分けて次の2種類があります。

税法上の扶養

所得税や住民税の「人的控除」として、家族を支えている人の税負担を軽くすることが目的です。

納税者(あなた)の所得から一定額を差し引くことで課税所得を減らし、税金(所得税・住民税)を軽減します。

社会保険上の扶養

健康保険制度において、収入のない(または少ない)親の健康保険料を子どもが代わりに負担せずに済むようにするための仕組みです。

親を扶養に入れると、親の健康保険料が無料になります(あなたの保険に便乗する形)。

親を扶養に入れるための条件とは?

ひと口に「扶養」といっても、税法上の扶養社会保険上の扶養では「条件」が大きく異なります。
ここでは、それぞれの条件について分かりやすく解説していきます。

税法上の扶養の条件

税法上の扶養の条件
  • 生計を一にしていること
  • 年間所得が48万円以下であること
  • 青色申告専従者や白色申告の事業専従者でないこと

生計を一にしていること

生計を一にする」とは、税法上で「同じ家計で生活している」とみなされる状態のことを指します。
必ずしも同居している必要はありませんが、日常的に生活費や仕送りなどで金銭的援助をしている関係であることが求められます。

以下のようなケースが「生計を一にする」と判断されることがあります。

「生計を一にしている」と判断されるケース
  • 別居しているが、定期的に仕送りをしている
  • 医療費や生活費を立て替えて支払っている
  • 光熱費や家賃等の支払いを肩代わりしている
  • 毎月決まった金額を振り込んでいる
    (例:親の年金が少ない場合など)

年間所得が48万円以下であること

税法上で「扶養に入れられるか」を判定する際には、「所得金額」が48万円以下である必要があります。
ここで言う「所得」とは、単純な収入金額ではなく、収入から必要経費などを差し引いたあとの金額です。

給与収入の場合

給与には「給与所得控除」があり、それを差し引いた後の金額が所得となります。

年収103万円 − 給与所得控除55万円 = 所得48万円

 ➤ 給与収入が103万円以下であれば「所得」は48万円以下となり、扶養対象

公的年金収入の場合(高齢の親に多いケース)

年金には「公的年金等控除」があり、それを差し引いた後の金額が所得となります。
ただし、65歳未満か以上かで控除できる金額が変わるため注意が必要です。

【65歳未満の親の場合】

年金収入108万円 − 公的年金控除60万円 = 所得48万円

 ➤ 年金収入が108万円以下であれば「所得」は48万円以下となり、扶養対象

【65歳以上の親の場合】

年金収入158万円 − 公的年金控除110万円 = 所得48万円

 ➤ 年金収入が158万円以下であれば「所得」は48万円以下となり、扶養対象

青色申告専従者や白色申告の事業専従者でないこと

これは、個人事業主が家族に仕事を手伝ってもらい、その家族に報酬(給与)を支払っている場合に関係します。

青色申告専従者とは?

個人事業主が「青色申告」をしていて、所定の要件を満たす家族(親族)に対して給与を支払っている場合、その親族を「青色申告専従者」といいます。
この場合、事業主は専従者給与として経費計上できる一方で、その親族は扶養控除の対象から外れます。

白色申告の事業専従者とは?

青色ではなく「白色申告」をしている個人事業主でも、家族がその事業に従事している場合は「事業専従者」に該当します。
白色申告の場合、原則として配偶者控除や扶養控除を受けられません(※ただし、収入がない場合などは例外あり)。

上記に該当した場合は、扶養にすることができません。これは「二重の税メリットを認めない」ための制度設計です。

扶養に入れたい場合は、親を専従者から外す(=給与を払わない)ことで、扶養控除を適用できる可能性が出てきます。

ただし、専従者を外すと事業主側が経費計上できなくなるため、どちらの節税効果が大きいか比較検討が必要です。

社会保険上の扶養の条件

社会保険上の扶養の条件
  • 親の年収が130万円未満であること
  • 親の年収が被保険者の年収の1/2未満であること
  • 親の年齢が75歳未満であること

親の年収が130万円未満であること

原則:130万円未満
例外:親が60歳以上または障害者の場合は
   180万円未満まで可

これは、「親の年間収入が一定基準を超えていないか」のチェックです。給与、年金、事業収入、配当などをすべて合算します。

親の年収が被保険者の年収の1/2未満であること

これは、「親があなたに“経済的に依存しているか”どうか」を判断するための基準です。

※この「1/2未満」の基準は、仕送りしていても超えていたらNGです。

例えば、親の年収が120万円であなたの年収が200万円しかない場合、「あなたの1/2(=100万円)」を超えてしまい、扶養にはできません。

別居の場合はさらに注意が必要

別居している親を扶養に入れたい場合は、「仕送り額 > 親の収入」であることも求められます。たとえば、親の収入が月8万円なら、あなたが月9万円以上を仕送りしている実績が必要です。

親の年齢が75歳未満であること

日本では、75歳以上になると自動的に「後期高齢者医療制度」に加入する決まりがあります。

この制度は、それまで加入していた健康保険(会社の健康保険や国民健康保険など)とは完全に別の医療制度で運営されており、社会保険の“被扶養者”という概念自体が使えなくなるのです。

75歳になったらどうなる?

75歳の誕生日を迎えると、自動的に後期高齢者医療制度へ移行します。
それに伴い、たとえ子どもの健康保険に扶養されていたとしても自動的に「扶養から外れる」扱いとなります。


・健康保険の扶養に入れなくなる(継続不可)
・親本人が後期高齢者医療制度に個人で加入する
・親本人が保険料を支払う必要がある

親を扶養に入れるメリット

親を「扶養に入れる」ことで得られるメリットは、税金面と社会保険面の2つの制度それぞれに存在します。

ここでは、両制度の観点から具体的に説明します。

税法上のメリット(所得税・住民税の軽減)

扶養に入れた親の条件に応じて「扶養控除」が受けられ、あなたの所得税・住民税が軽減されます。

親が扶養親族になると、「扶養控除」として所得税や住民税が軽減されます。具体的には以下のとおり。

控除額

親の年齢控除額(所得税)控除額(住民税)
70歳未満38万円33万円
70歳以上(同居)58万円45万円
70歳以上(別居)48万円38万円

節税効果のイメージ

たとえば、課税所得が400万円ある人が58万円の控除を受けると、約8万2,000円の所得税軽減につながる可能性があります。

また、同居と見なされるかどうかで控除額が変わります。

社会保険上のメリット(健康保険料の免除)

親を健康保険の「被扶養者」として認定できれば、親の健康保険料を支払う必要がなくなります。

つまり、親が国民健康保険に加入しなくてよくなるため、年間の保険料(数万円〜十数万円)を節約することができます。

節約例

70歳の母が国民健康保険で年間保険料12万円 →
扶養に入れて健康保険に切替 → 0円になる

その他活用できる制度上のメリット

医療費控除

親の医療費をあなたが支払った場合、合計10万円を超えれば「医療費控除」の対象になります(扶養親族であればOK)。

障害者控除

親が障害者手帳を持っている場合は、27万円(特別障害者は40万円)まで追加の所得控除を受けることができます。

デメリットや気をつけたい点

税法上の扶養で「明確な金銭的デメリット」は原則なし

まず前提として、税法上の扶養(=扶養控除)には、次のような特徴があります。

  • 条件を満たせば控除が受けられる
  • 親を扶養に入れても追加の税金が発生することはない
  • 親に「扶養されている」という扱いが課されることもない

つまり、制度的に税金が増えることは基本的にありません。

一方で社会保険上では、意外と見落とされがちなデメリットや注意点も存在します。

以下に、制度ごとに分けて詳しくご説明します。

医療費の自己負担割合が増える可能性(社会保険)

特に注意すべきケース:親が70歳〜74歳のとき

 国民健康保険に加入している場合
  →自己負担2割

 社会保険の被扶養者になると
  →自己負担3割に増加することがある

これは多くの人が見落としてしまうポイントです。
通院が多い高齢者の場合、負担増が年間数万円単位になることも。

介護保険料が増えるケースがある

社会保険における扶養認定により、親の所得が「扶養されている」と見なされ、住民税の課税対象区分が上がる場合があります。

→ その結果、介護保険料が高い区分に引き上げられることがあります。

自治体の福祉・医療支援制度が受けられなくなることも

親を扶養に入れると、以下のような制度の対象から外れることがあります。

・医療費助成(特定疾患・高齢者医療助成など)
・高額療養費の軽減措置
・生活保護の扶養照会・支給制限

特に、自治体の所得判定が“世帯全体”で行われる場合には、扶養関係を結ぶことで支援が減る、または打ち切られることもあります。

扶養家族にするための手続きと注意点

親を扶養に入れるには、会社員であれば年末調整の「扶養控除等申告書」に記載するだけでOKです。個人事業主やフリーランスなら確定申告で申告します。

ただし、以下の点に注意しましょう。

仕送りの証拠を残しておくこと(振込記録など)
・親の収入や年金額を事前に把握しておくこと
兄弟がいる場合は、誰が扶養に入れるかを調整しておくこと

また、確定申告の際には親のマイナンバーの記載や、本人確認書類の写しの添付が必要になることもあります。

その他の控除枠の活用も考えよう

扶養控除以外にも、親の医療費を負担していれば医療費控除、同居して介護をしていれば介護保険料控除や障害者控除など、使える控除は複数あります。

また、親の資産が大きくなってきた場合には、相続税対策として「暦年贈与」「家族信託」などを検討するのも一つの選択肢です。

まとめ:親を扶養に入れる前に“本当に得かどうか”をじっくり考えよう

親を扶養に入れると、所得税や住民税の負担が軽くなったり、健康保険料がゼロになったりと、家計に嬉しい効果があるのは事実です。
特に年金暮らしの親を支えている方にとっては、制度をうまく使えば年間で数万円の節税につながることもあります。

ただし、扶養に入れたことで医療費の自己負担が増えたり、福祉制度の対象から外れたりと、「見えにくいデメリット」も確かに存在します。
また、税法上と社会保険上で条件が違うことや、75歳を超えると扶養にできなくなるといった“制度の落とし穴”も見逃せません。

だからこそ大切なのは、「とにかく節税になるから」ではなく、
▶︎ 親の収入状況は?
▶︎ 自分の収入とのバランスは?
▶︎ 医療・介護の負担は?
▶︎ 兄弟との分担はどうする?
といったことを、家族全体で考えてみること。

そして分からないことがあれば、税理士やFPといった専門家に相談してみるのもおすすめです。
制度を知っているかどうかだけで、大きな差が生まれる時代。この記事が、あなたとご家族にとって納得のいく選択のヒントになればうれしいです。

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