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株を買う人が知っておくべき「のれん償却」とは?

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会社の決算を見ると、「のれん償却」や「のれんの減損」という言葉が出てくることがあります。

たとえば、「M&Aをして大きなのれんを計上した」や、「のれんの減損をして赤字になった」といったニュースを聞いたことがあるかもしれません。

実は、この「のれん償却」や「のれんの減損」は、会社の利益や株価に大きく影響します。

特に、企業を買収する会社では、こののれんの扱い方で利益が大きく変わることがあります。

では、「のれん」とは何なのか? なぜ会社はのれんを記録し、それを償却したり減損したりするのか? 投資をするうえでどう影響するのか?

この記事では、株を買う人が知っておくべき「のれん償却」について、わかりやすく説明します。

目次

のれん償却とは?

のれんとは?

のれんとは、会社が別の会社を買うときに、その会社の価値として計上する「目に見えない資産」のことです。

「のれん」という名前の由来

「のれん」という言葉は、昔から日本の商売で使われていました。

お店の入り口にある「のれん」は、その店のブランドや信用の象徴でした。

そのため、会社のブランド力や顧客のつながりなど、目に見えない価値を「のれん」と呼ぶようになったのです。

こののれんは、時間がたつと価値が変わることがあります。

そのため、会社は定期的に「のれん償却」という処理を行い、会計上の数字を調整します。

のれんが発生する場面

のれんは、主に次のようなときに発生します。

のれんが発生する場面
  1. 会社の買収(M&A)
  2. ブランドや技術の価値
  3. 競争力を高めるための買収

会社の買収(M&A)

ある会社が別の会社を買うとき、買った価格がその会社の資産を超える場合にのれんが発生します。

例:A社がB社を100億円で買い、B社の資産が80億円だった場合、20億円がのれんになります。

例:ソフトバンクとアーム(Arm)

Armの事業は成長したものの、市場環境の変化によりのれんの価値に影響を与える可能性もありました。2016年、ソフトバンクはイギリスの半導体設計会社「アーム(Arm)」を約3.3兆円で買収しました。
しかし、Armの純資産額はこの買収額よりも大幅に少なかったため、差額が「のれん」として計上されました。
その後、ソフトバンクはArmの売却を検討し、最終的に株式市場での上場を選択しました。

ブランドや技術の価値

有名なブランドや特別な技術を持つ会社を買収すると、その価値が資産よりも高くなることがあります。

例:LVMH(ルイ・ヴィトン)がティファニーを買収

LVMHはティファニーのブランド力を活かして高級ジュエリー市場での影響力を強めることを目的としており、このブランド価値が「のれん」として計上されました。
2021年、フランスの高級ブランドグループ「LVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)」は、アメリカのジュエリーブランド「ティファニー」を約1.5兆円で買収しました。
ティファニーの工場や店舗などの物理的な資産はそこまで高額ではありませんが、「ティファニー」というブランドの価値が非常に高いため、買収額が高くなりました。

競争力を高めるための買収

競争に勝つために他の会社を買収し、事業を強くすることもあります。そのときにも、のれんが発生することがあります。

例:ディズニーがピクサー、マーベル、ルーカスフィルムを買収

ディズニーは買収した映画シリーズを活用し、テーマパークやグッズ販売を通じて大きな収益を上げる戦略を取りました。
ディズニーは、映画市場での競争力を高めるために、以下の有名な映画制作会社を買収しました。

2006年:ピクサー(『トイ・ストーリー』『ファインディング・ニモ』など)を約7,400億円で買収。
2009年:マーベル・エンターテインメント(『アベンジャーズ』シリーズ)を約5,000億円で買収。
2012年:ルーカスフィルム(『スター・ウォーズ』シリーズ)を約4,000億円で買収。

これらの買収では、映画スタジオの設備や技術よりも、「キャラクターの知名度」や「コンテンツの権利」などの無形資産が大きな価値を持っていたため、それらがのれんとして計上されました。

このように、のれんは単なる資産価値を超えて、ブランド力や将来の利益を期待して計上されることが多いです。

のれんの会計処理

のれんの処理方法には、2つの主なやり方があります。

1. 定額償却(日本のルール)

日本では、のれんを20年以内の決められた期間で少しずつ償却しなければなりません。

例えば、10億円ののれんを10年で償却する場合、毎年1億円を費用として計上します。これにより、会社の利益が少しずつ減ることになります。

2. 減損テスト(国際基準・アメリカ基準)

国際会計基準(IFRS)やアメリカの基準では、のれんは毎年価値をチェックし、価値が下がったときだけ減損(損失)として計上します。

つまり、価値が下がらなければ、のれんの費用は発生しません。しかし、急に価値が下がると、一度に大きな損失が発生する可能性があります。

のれん償却が会社に与える影響

  • 利益への影響
    • のれん償却をすると、会社の利益が減ります。
    • のれんの減損が発生すると、一度に大きな損失を計上し、株価が下がることがあります。
  • 投資家がチェックすべきポイント
    • 会社がM&Aをした場合、のれんの金額が大きすぎないかを見る。
    • のれんの減損が起きたら、その原因を分析する。
    • 減損が頻繁に起こる会社は、M&Aがうまくいっていない可能性がある。

まとめ

のれん償却は、企業の買収後の財務状況を整理するために行われる会計処理です。

  • 日本では「定額償却」(決められた年数で分けて費用にする)
  • 国際基準では「減損テスト」(価値が下がったときにまとめて費用にする)

のれん償却や減損は、会社の利益に大きく影響するため、投資をする人にとっては重要なポイントです。

決算を見るときは、のれんがどれくらいあるのか、減損が発生していないかをチェックし、会社の将来性をしっかり判断しましょう。

また、日本の会計ルールが今後変わる可能性もあるため、最新の情報に注意することも大切です。

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